長い長いお医者さんのつぶやきブログ~医学と医療の回想~

思いつくまま気の向くまま,医学,医療に関するちょっとした事柄を末端医者の立場から気軽に発信出来たらいいなと思い,一念発起してブログを立ち上げました。煌びやかではありませんが,よろしければお付き合い下さいませ。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

糖尿病性腎症

第83回 糖尿病性腎症 腎臓は血液をろ過して余分な水分や老廃物(尿素窒素,尿酸,クレアチニンなど),電解質を尿として体外に排出する臓器です。糖や蛋白など生体に必要なものは決して漏らしません。ナトリウムと水分の調整のみならず,レニン-アンジオ…

日本人研究者の活躍した脚気とビタミンB1の歴史1

第82回 日本人研究者の活躍した脚気とビタミンB1の歴史1 脚気(かっけ)(英語Beriberi)はビタミンB1欠乏症によって末梢神経障害(多発神経炎)と高拍出性心不全(脚気心)を生じる疾患です。栄養学の知識のない昔の日本は,肺結核症や梅毒などの感染症…

糖尿病性網膜症

第81回 糖尿病性網膜症 眼球をカメラに例えると,網膜はフィルムカメラのネガフィルム,デジタルカメラのイメージセンサー(撮像素子)に相当します。網膜は眼球の内面後方に存在します。光や色を感知する神経細胞(視細胞)の敷き詰められた膜状組織(厚…

消毒法の父ゼンメルヴァイスの悲運

第80回 消毒法の父ゼンメルヴァイスの悲運 第69回,第75回でも触れさせていただきましたが,細菌(結核菌を含む)や梅毒トレポネーマへの感染に対して治療が出来るようになったのは,今からせいぜい70~80年前からです。第二次世界大戦中の1943年,イ…

糖尿病性神経障害

第79回 糖尿病性神経障害 糖尿病の合併症の一つに糖尿病性神経障害(ニューロパチー)があります。高血糖による一過性,可逆性の神経障害もありうるのですが,ここでは血糖コントロール不良が長期に継続したことで発症するものについて述べさせていただき…

糖尿病は血管を傷める

第78回 糖尿病は血管を傷める 糖尿病治療の不十分な状態が続くと,何が怖いかと言いますと,重大な合併症です。特に症状のあまりない糖尿病の方には血液中の糖分が高いだけでしょうと思われるかもしれませんが,知らず知らずのうちに徐々に血管が傷めつけ…

糖尿病の基本知識

第77回 糖尿病の基本知識 飲食物を摂取すると,主として胃から小腸において消化され,必要な栄養素が吸収され,やがてブドウ糖(グルコース,C6H12O6)が血中に増加します。静脈血中のブドウ糖濃度を「血糖値」と呼んでいます。人間の体はよく出来ていて,…

ヒ素は毒にも治療薬にもなる

第76回 ヒ素は毒にも治療薬にもなる 色々なことが起こるものです。ある製造会社のBCGワクチンを溶かす生理食塩水から微量のヒ素が検出されたとの報道がありました。生理食塩水をガラス製の容器に入れ加熱する過程で容器からヒ素が溶け出たのが原因で,2008…

猩紅熱

第75回 猩紅熱 猩紅熱(しょうこうねつ,Scarlet fever)という病気をお聞きになられたことはないでしょうか?第69回で肺結核症に触れさせていただきましたが,それと同様に,かつて猛威を振るった細菌感染症です。文学作品を読むと登場人物の誰かが猩紅…

アスクレピオスの杖

第74回 アスクレピオスの杖 国際連合の一機関である世界保健機構をはじめとして,医学,医師に関する組織,団体の多くに,「アスクレピオスの杖」がシンボル,ロゴに組み込まれているのを御存知でしょうか? アスクレピオスはギリシア神話に登場する医神で…

人工知能が病理診断

第73回 人工知能が病理診断 2018/11/01(木)に西日本新聞朝刊の「九州大学発AI病理診断第1号ベンチャーソフト開発。数分で解析,費用は半分に」という記事を読みました。いやあ~すごいですね~,とうとう人工知能が医者の領域に入って来ましたか!とい…

健康食品は健康に良くないこともある

第72回 健康食品は健康に良くないこともある 楽〇〇〇やY〇〇〇〇!ショッピングのようなホームページを拝見すると,実に多種多様な健康食品が販売されていますね。以前なら耳にしたことのない小さな会社ばかりが販売していましたが,最近は大手企業も積極…