長い長いお医者さんのつぶやきブログ~医学と医療の回想~

思いつくまま気の向くまま,医学,医療に関するちょっとした事柄を末端医者の立場から気軽に発信出来たらいいなと思い,一念発起してブログを立ち上げました。煌びやかではありませんが,よろしければお付き合い下さいませ。

2019-01-01から1年間の記事一覧

蟯虫症(ぎょうちゅうしょう)

第108回 蟯虫症(ぎょうちゅうしょう) 九州国立博物館が所蔵している「針聞書(はりききがき)」(縦24.3cm,横21.4cm,152頁)という鍼灸に関する4部構成の医学書があります。室町時代の後期,戦国時代の山場(織田信長の上洛)である1568年(永禄11年…

ヒトと寄生虫

第107回 ヒトと寄生虫 私達医師は医学生の時に,医動物学,寄生虫学,免疫学,感染症内科学,感染防御学,公衆衛生学,熱帯医学などの講義,実習で,様々な視点から寄生虫について学びます。寄生虫の生態やヒトへの寄生虫感染とその病態,治療などについ…

シラミ症3 ケジラミ症

第106回 シラミ症3 ケジラミ症 <ケジラミ症> ケジラミは「毛」と言っても,特に陰毛を好みます。よって,ケジラミ症は性感染症の一つに挙げられています。陰部同士の直接接触によりケジラミが感染します。不特定多数のパートナーとの性行為により蔓延…

シラミ症2 コロモジラミ症

第105回 シラミ症2 コロモジラミ症 <コロモジラミ症> コロモジラミは数時間毎にヒトから吸血を繰り返し,吸血以外の時は主に衣類の襟首や袖口などの縫い目,折り目に付着して生活をします。その名前の通りコロモが好きなんですね。よって,コロモジラ…

シラミ症1 歴史とアタマジラミ症

第104回 シラミ症1 歴史とアタマジラミ症 京都国立博物館に所蔵されている国宝の中に,「病草紙」(やまいのそうし)(1952年指定)というものがあります。後白河法皇(1127~1192年)の命で1180年代末(平安時代末期から鎌倉時代初期の頃)に制作された…

疥癬

第103回 疥癬 ダニ(蜱)は全世界で45,000種もあり形態,生態共に極めて多様性に富むものの,ヒトに害をなすものはほんの一部だそうです。節足動物門鋏角亜門クモ網ダニ目に分類されます。クモやサソリの仲間と言えます。基本的には頭部,胸部,腹部が一…

尖圭コンジローマ

第102回 尖圭コンジローマ 尖圭(せんけい)コンジローマ(Condyloma acuminatum)は性感染症の一つで,ヒト乳頭腫ウイルスの特に6型,11型の感染によって性行為に関連した部位(外陰部,陰茎,膣,子宮頸部,肛門周囲,口腔など)に発生する多発性の「い…

伝染性膿痂疹(とびひ)

第101回 伝染性膿痂疹(とびひ) 今回は伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)について触れさせていただきます。「とびひ」と言えばお分かりになるでしょうか。あちこちに飛び火して火事が周囲に広がるがごとく,独特の臨床経過をたどる皮膚の細菌感染…

足白癬(水虫)

第100回 足白癬(水虫) 俗に言う「水虫」は正式には足白癬(あしはくせん)と呼びます。昔からあるごくありふれた病気の一つですね。季節性の変動(夏に増加,冬に減少)がありますが,日本人では平均5人中1人程度の割合で足白癬があるのだそうで,かな…

耳垢栓塞

第99回 耳垢栓塞 「耳垢栓塞」何と読むのかさっぱり分からない!と言われそうですが,「じこうせんそく」と読みます。耳あかが溜まりすぎて耳の穴(外耳道)につまっている状態を指します。小学校の健康診断で引っ掛かりやすい項目の一つです。乳幼児~小…

胎盤,臍帯,卵膜

第98回 胎盤,臍帯,卵膜 胎盤,臍帯,卵膜は女性が子供を出産する際に必要な「臨時の臓器」で,女性にしかありえないたいへん興味深いものです。動物の哺乳類の一系統である有胎盤類(真獣下綱)のみが胎盤を形成し,ヒトを含む霊長類はここに所属します…

水痘

第97回 水痘 水痘(すいとう,Varicella, Chicken pox)とは,いわゆる水疱瘡(みずぼうそう)で,水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症です。発熱や全身倦怠感など非特異的な症状が出現する場合もありますが,皮膚に全身散布性に水疱を形成することを特徴…

軟線維腫,軟性線維腫

第96回 軟線維腫,軟性線維腫 尋常性疣贅,脂漏性角化症と並んでよくある皮膚の隆起性病変は,一種の加齢性変化(皮膚の弛み)と考えられているものです。本やホームページによって書いていることが異なるかもしれませんが,軟(性)線維腫(なん(せい)…

脂漏性角化症

第95回 脂漏性角化症 脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)は,老人性疣贅,老人性いぼと呼ばれたりすることがありますが,特に高齢者の顔面や頭部,体幹などに発生する表皮系の良性腫瘍です。20歳代でも認められることがありますので,必ずしも「老人…

尋常性疣贅

第94回 尋常性疣贅 何て読むのか分かりにくいかもしれませんが,尋常性疣贅は「じんじょうせいゆうぜい」と読みます。尋常性は「ありふれた」,疣贅は「いぼ」という意味ですので,ありふれたいぼと言う意味です。 尋常性疣贅は,皮膚の微小外傷からヒト乳…

梅毒

第93回 梅毒 性感染症の一つである梅毒(ばいどく)(Syphilis)は,梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というらせん状の細菌(長径0.1-0.2µ,長さ6-20µ,グラム染色陰性)による全身性慢性感染症です。それぞれ特徴的な3つ(あるいは4つ)病期,潜伏…