長い長いお医者さんのつぶやきブログ~医学と医療の回想~

思いつくまま気の向くまま,医学,医療に関するちょっとした事柄を末端医者の立場から気軽に発信出来たらいいなと思い,一念発起してブログを立ち上げました。煌びやかではありませんが,よろしければお付き合い下さいませ。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ヒポクラテスの木

第71回 ヒポクラテスの木 医学部医学科キャンパス内や大学病院などの傍らに,1本のプラタナス(和名:鈴懸,すずかけ)の木が植えられているのを御存知でしょうか?その木の横にはきっと解説が添えられていると思います。「ヒポクラテスの木」と呼ばれて…

臨床研修と消えゆく病理解剖

第70回 臨床研修と消えゆく病理解剖 医学部医学科の専門課程に入ると,最初に解剖学の講義と実習が始まり,非常にたいへんな系統解剖によって医学を学ぶ者としての洗礼を受けるということを第4回で触れました。今は医学部医学科に入学したら,早いうちに…

肺結核症の今と昔

第69回 肺結核症の今と昔 宮崎駿監督のジブリ映画「風立ちぬ」を御覧になられたでしょうか。堀越二郎の恋人,里見菜穂子が発熱したり喀血したり高原の療養所に入院したりする場面があります。映画の中で病名は出て来ませんが,まさに肺結核症です。 肺結核…

体がきれいすぎる?現代人

第68回 体がきれいすぎる?現代人 私達医療従事者は,もちろんマスク着用や手洗いの徹底など予防策を心がけているものの,常に病原体に被曝する危険性をはらんでいます。私が卒後5年目頃まで職場では(今は行わなくなった)ツベルクリン反応検査が定期的に…

救急車と病院医師は無関係!?

第67回 救急車と病院医師は無関係!? 「救急」の感じ取り方は人に依るかもしれませんが,救急患者の受け入れ先については,一次医療,すなわち,外来で対処しうる帰宅可能な軽症患者(例えば,発熱や咳嗽,嘔吐,下痢,ちょっとした外傷など)は,自宅待…

がん化リスクのある大腸ポリープ

第66回 がん化リスクのある大腸ポリープ 「TBS系の医療バラエティー番組で,ある芸能人の方にがん化リスクのある巨大な大腸ポリープが発見された。昨年も摘出手術を受けた。医師から余命5年と告げられた。」という記事を読みました。いくら仕事とは言え,…

遅いぞ!病院の証明書

第65回 遅いぞ!病院の証明書 多くの皆様は備えとして何らかの生命保険や医療保険,がん保険などに加入されていると思います。石橋を叩き過ぎて渡る前に崩壊しそうなほど慎重な私は,ファイナンシャルプランナーの相談窓口で相談しても掛けるものはもうな…

一喜一憂する検診結果

第64回 一喜一憂する検診結果 春や秋は職場検診や住民健診が盛んだと思います。季節はいいのですが,受ける立場の方は気が重くなるかもしれません。また検査値に引っかかって病院を受診しないといけないのだろうなあとか,また同じ調査用紙に同じこと(既…

優生思想と強制不妊手術

第61回 優生思想と強制不妊手術 最近,強制不妊手術と人権侵害の問題が取り沙汰され,国への損害賠償訴訟も起きていることは御存知かと思います。強制不妊(断種)は当時の優生保護法(昭和23年制定)に基づいて実施されました。なぜこのような法律があっ…

戦争と医学研究

第54回 戦争と医学研究 第53回で医学研究と人体実験(ヒトの生体実験)と題したブログを書かせていただきました。人体実験という言葉に敏感になられる方がいらっしゃるかと思いますが,今回のブログを見据えてあえてその言葉を使わせていただきました。2…

検査は細かければ良いと言えず

第63回 検査は細かければ良いと言えず 第62回で様々な方法でがんの細胞や組織を直接採取する生検,現状では最終診断としての病理組織検査について触れました。細胞や組織まで採取して詳細に検査するのだから,何でも分かってしまうかのような気がします…

次々変化するがん診断

第62回 次々変化するがん診断 がんが疑われたら病院で精密検査を受けることになりますが,血液検査やレントゲン検査,超音波検査,CT,MRI,PETなどの結果によって,がんの分布や進行期,疑われるがんの種類などが判明していきます。しかし,どんなに検査…

アスベスト(石綿)と悪性腫瘍

第60回 アスベスト(石綿)と悪性腫瘍 アスベスト(石綿)って御存知ですか?今でこそ政策で原則使用禁止になっていて市場には流通していませんが,私が子供の頃なんてその辺に普通にありました。例えば,私が小学生の時には酸素発生や木の乾留などの理科…

ステロイド軟膏の強さ

第59回 ステロイド軟膏の強さ 俗に皮膚にブツブツが出来たと言いますが,ブツブツをもう少し格好良く言うと皮疹(ひしん)です。全く出来たことがないという人はおそらくいないと思います。私は皮膚が弱く,しばしば下着や靴下のゴムの辺りの接触性皮膚炎…

消毒薬と傷口

第58回 消毒薬と傷口 我が子を見ていても思いますが,保育所,幼稚園,小学生低学年あたりの子供達って本当に生傷が絶えませんよね。すぐ転んで膝を擦りむいたり,草で指を切ったり,まあたいへんですが,再生能力もすごいものがあります。若さは素晴らし…

処罰前提は何も良くならない

第57回 処罰前提は何も良くならない ちょっと難しい言葉ですが,専門家には「善良なる管理者の注意義務」(善管注意義務)があるとされています。これは「受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務を負う」という民…

死亡確認と体制の不備

第56回 死亡確認と体制の不備 老衰,病気,事故などの異状死いかなる原因にもかかわらず,ヒトの死亡診断や死体検案は最終的に医師,歯科医師が行い,死亡診断書や死体検案書を作成しなければなりません。そのマニュアルが厚生労働省のホームページで公表…

消えゆく医師の名を冠した疾患

第55回 消えゆく医師の名を冠した疾患 研究の結果,ある疾患概念や治療法などが発見,提唱され,後に医学会で認められた場合,疾患名,治療法などにその貢献医師の名を冠し功績を称えるということが長らく行われてきました。私も医師ですから,自分の名前…